◆プログラム
日本、韓国、中国の三カ国からの各専門家をお迎えし、日中韓シンポジウムを「東アジア地域秩序の変化と日中韓関係」というテーマで韓国の東西大学校日本研究センター、中国の中国社会科学院アジア太平洋・グローバル戦略研究院北東アジア研究センターと共同開催した。シンポジウムは総四つのセッションで行われた。
第一セッションでは「2016年東アジア地域秩序と米大統領選の影響」をテーマに慶應義塾大学の添谷芳秀(日本)、延世大学校の孫洌(韓国)、中国社会学院の李成日(中国)が報告した。
添谷芳秀教授は主に日本の現状を説明しながらその中でも日本の「平和安全法制」に注目した。大きく分けて「存立危機事態」、「重要影響事態安全確保法」、「国際平和支援法」に区別できるこの法制の中でも現政権が力を入れているのは「存立危機事態」であると主張した。だが、これもまた従来の日本が歩いて来たフレームワーク、憲法9条と安保体制という枠組みに入るようになったことから、このような近頃の日本の動きは決して戦後の日本レジームからの脱却や変革とは見られないと指摘した。孫洌教授は現在の東アジア地域の現状は米国と日本が主導する東アジア地域の秩序に中国が朝鮮する局面であると述べ、北朝鮮に対する影響力を持つ中国とどのようにバランスを取るのかが最大のキーポイントとなるだろうと主張した。このような状況の中では日米韓三カ国の協力が北朝鮮を制裁するための体制になり得ると主張し、そのような中でもこの体制が決して中国に対する軍事的対抗になってはいけないと主張した。このような日米韓という三カ国の協力のためにでも日韓関係の改善は大事であると指摘した。
李奇泰研究委員は「北朝鮮問題と日米韓協力」をテーマに、北朝鮮の第4回核実験などの脅威が存在する反面、日米同盟の強化や日米韓3カ国の安全保障強化を求めることが重要であり、また、国際テロなどの非伝統的安全保障分野での協力という観点から日米韓関係の発展を模索することによって新たな日韓協力も求められると述べた。
林載桓教授は「日中関係の新展開と日韓協力」をテーマに日中関係は東シナ海での領有権対立や米国のアジア回帰政策展開などによる対中戦略の変化によって戦略的競争関係へ移行することとなったと述べた。このような背景から日韓協力を考えた場合には日中関係の悪化を契機に日韓防衛協力を求めることとなれば、新たなる日韓協力を生み出すことができるのではないかと述べた。
第二セッションでは「日韓協力」をテーマに西野純也慶應義塾大学教授と李香鎮立教大学教授が報告した。西野純也教授は「慰安婦合意以降の日韓協力」をテーマに慰安婦合意以降残る課題として慰安婦の方々の名誉の回復や合意を韓国内世論に理解させること、歴史認識をめぐる日韓両国の国民意識や歴史問題によるその他の日韓関係の領域への悪影響を及ぼさないように管理することなどを挙げた。尤も、これからの日韓関係を維持していくためには北朝鮮という一つの脅威だけを標的とせず、様々な分野からの戦略的協力を両国の共同利益として連携していくこととなれば新たな日韓協力を生み出すことができるだろうと主張した。李香鎮教授は日韓協力を文化協力という視点から分析し、韓流が持つソフトパワーを生かして文化の側面での日韓協力を導き出せると主張した。また、これからの韓流は片方や一定の階層だけではなく、両国がお互いの文化を交流できる民間次元での文化協力を目指すべきであると主張した。