◆プログラム
韓国∙慶南大学の李洙勲教授を招聘して「北東アジア情勢と南北朝鮮の対応」と題する研究会を開催した。研究会の目的は、地政学的な移行期に向かっている東アジアの中で、韓国の対外政策を考察することであった。
まず、李教授は、東アジア秩序変化の根本的な要因としてアメリカ覇権の衰退と中国の急浮上を取り挙げた。太平洋戦後以後、アメリカ主導で構築された地域秩序が挑戦と変化に直面している中で、領土や歴史、同盟など、様々なイシューが再定義され、葛藤と不安定をもたらしている。しかし、アメリカ主導の地域秩序の代案が模索されている中で、中国の時代と呼ぶにはまだ時期が熟していない感がある。要するに、東アジアの地域秩序は「重層的な時間帯」に向かっているのである。
それでは、上述した東アジア情勢の中で、韓国はいかなる対応を取っているのか。李教授は、朴槿恩政権の北東アジア平和協力構想について議論を進めた。韓国の朴槿恵政権は、東アジア地域において、域内国間の経済的相互依存は深くなっているにも関わらず、政治∙安保分野での対立が激しくなっている点に注目して、環境問題や災難、核安保など非伝統的な安保分野から対話と協力の経験を積み上げて政治∙安保分野における信頼のインフラを構築していくというピジョンを打ち出した。冷戦の終焉後、盧泰愚政権の北方政策や盧武鉉政権の東北亜時代論など、韓国の歴代政権は、自らの地域構想を打ち出して東アジア情勢に能動的に対応しようとしてきた。朴槿恩政権の北東アジア平和協力構想もそうした努力と軌を一つにしているが、政権発足から3年が経った今も明白な成果は出ていない。まだ議論の水準に止まっている。地域構想の推進にあたって、日韓関係の悪化が否定的な影響を及ぼしている。そして、李教授が決定的な原因として取り挙げたのは、南北関係の膠着であった。李教授によれば、北朝鮮の核問題のため、南北関係のあらゆる分野で交流と対話が途絶えており、韓国が主導的に地域外交を遂行できる余地が縮まっているということである。李明博政権の非核∙解放3000政策は南北関係を以前より悪化させ、北朝鮮の核問題は放置状態となっている。韓国では、北朝鮮の急変事態による吸収統一論が議論されているが、北朝鮮の急変事態は韓国にとって耐え難い大惨事になる恐れがあり、むしろ北朝鮮との交流協力を通じて避けるべきシナリオである。つまり、北朝鮮問題を解決するためには、関与政策以外に代案は存在せず、北朝鮮の核兵器を統制するための国際レジームが求められているのである。こうした分析を踏まえて、李教授は、6者会談を再開させるために、韓国が積極的に周辺外交を展開しなければならないとした上で、6者会談を通じて域内国の間で対話の習慣、相互信頼を築いていけば、北朝鮮の非核化を成し遂げ、北東アジアの平和安保メカニズムを築くことができると主張した。
報告の後、平岩俊司教授の討論が行われた。平岩教授は、北朝鮮問題における中国の役割について議論を進めた。平岩教授が強調したのは、北朝鮮の対米自信が中朝関係に変化をもたらしている点であった。平岩教授によれれば、金正恩時代の北朝鮮は核兵器とミサイル保有できたことによって、アメリカに対して一層自信を持つようになり、安全保障面における中国への依存度が金正日時代より低くなっているという。こうした分析を踏まえて、平岩教授は北朝鮮問題における中国の役割について漠然な期待感ではなく、より正確な考察が必要であると指摘した。
*センターによる整理