◆プログラム
Trinity UniversityのYOO, Hyon Joo先生をお招きし、東アジア地域における米軍基地の移転問題に関する研究会を開催した。1996年、日米は沖縄の普天間基地の辺野古への移転に合意した。また、米韓は90年代初旬に、ソウル龍山(ヨンサン)基地の移転に合意した。ところが、沖縄の普天間基地の移転作業は膠着状況に陥っている一方、韓国の方では比較的順著に進んでいる。研究会の目的は、基地政治(Base Politics)をキーワードにして、同盟国間の合意事項の執行過程を比較し、分析することであった。
基地政治は同盟という国際政治のみならず、国内政治の要因が強く作用する分野である。日韓共に民主主義国家である。それでは、同盟国間の基地移転合意事項の執行にあたって、国内政治制度がいかなる影響を及ぼすのか。こうした問題意識を提示したうえで、YOO教授が分析の基準として次の二つを取り上げた。一つ目は、地方政権の正統性である。日本の場合に、沖縄県は国側から経済的支援を得るためには、基地移転に同意する必要があるが、住民の意見を考慮して積極的に賛成することはできない状態である。二つ目は、国内政治集団の分裂である。日本の場合、辺野古への基地移転に反対する団体は、海外の利益団体と連携を組むなど、基地問題の国際化を図っている一方で、日本政府は反基地意見を宥めるために、様々な経済的支援を提供しているなど、基地移転問題に対する日本国内政治の分裂状態は日増しに激しくなっている。これに反し韓国の場合は、基地問題に対する国内政治の分裂は激しいとは言えず、中央政府が主導権をもって移転作業を進めているのが特徴である。
報告の後、全鎮浩教授の討論が行われた。金教授が指摘したのは、国際変数と国内変数の比重が日韓それぞれ異なる点であった。韓国は北朝鮮の脅威に直面しており、そうした外部要因が国内要因を上回る状況である。しかし、日本の沖縄は米軍基地に対する歴史的感情が国際要因より強く作用しているのである。
*センターによる整理