◆プログラム
韓国外国語大学のファン∙ジェホ教授をお招きし、中韓関係に関するセミナーを開催した。セミナーでは、習近平、朴槿恵政権における中韓関係の現状を検討し、両国関係の展望について論じた。
90年代の国交正常化以後、中韓関係は着実に発展してきた。2008年に、両国の間では戦略的協力同伴者関係が形成され、2013年には協力関係を内実共に具体化していく段階に入りつつある。とりわけ、習近平、朴槿恵政権に入ってから、中韓関係は目まぐるしい発展を成し遂げている。首脳会談と高位レベルでの協議を経て、両国は経済分野を越え戦略協力のメカニズムを構築し、首脳及び政府間の信頼関係を築くことができた。
上述した中韓間の急接近は両国の思惑が交錯する中で、進んでいる。まず、ファン教授は、韓国が中国との良好な関係形成に尽力する理由として高い対中経済依存度を挙げた。また、北朝鮮問題を対処するにあたって、中国の役割は韓国にとって不可欠である。ファン教授によれば、韓国は中国が北朝鮮の軍事挑発を抑制させ、長期的には朝鮮半島統一のための建設的な役割を果たすことを求めているという。一方、中国にとって、韓国との良好な関係は日本に対する外交的優位をもたらすと共に、覇権国のイメージを払拭させて周辺国との良好な関係へ繋がる。いずれにせよ、安保、経済を含めた様々な分野において、中韓両国の協力が深まり、制度化されつつあるのが現状である。
このように友好関係を構築しつつある韓国と中国であるが、不安要因も存在する。まず、ファン教授は北朝鮮問題を指摘した。北朝鮮の将来をめぐって不安定な状況が続いている。習近平の中国が朝鮮半島問題において、北朝鮮より韓国を重視する姿勢を取っているように見えるものの、長期的な観点から見て北朝鮮に対する中国の戦略的利益が変わるのかは不明であるまた、サードミサイル(Terminal High Altitude Area Defense missile)の韓国配備問題がある。中国はサードミサイルの韓国配備を激しく反対しており、これはサード問題が米韓間の軍事問題の領域を超えて米中間の戦略問題化していることを物語っている。サードミサイル問題をめぐって、アメリカと中国が韓国に踏み絵を突きつける様子となっており、今後中韓間の最大の争点になると予想される。このような分析を踏まえて、ファン教授は、現在の中韓関係が成熟段階に達したとは言えず、関係悪化を防ぐための努力が求められると論じた。
ファン教授の報告後、添谷芳秀教授と阪田恭代教授の討論が行われた。両教授は、日韓それぞれが中国の台頭に対する認識の幅を広げるべきであると主張した。両教授によれば、韓国の中国論は自国経済及び朝鮮半島の範囲に止まっており、日本は国内政治及び中国脅威論に縛られているという。こうした問題意識を示した上で、両教授は日本と韓国が地域、グローバルの文脈で中国の台頭を捉え、中国との共存論理を模索することを提言した。
*センターによる整理