◆プログラム
北京大学の金景一教授をお招きし、「中国の朝鮮半島政策」を題とする定例セミナーを開催した。報告の趣旨は、中国の朝鮮半島政策は平和と安定を基盤とし、朝鮮半島問題の根本的解決を推進することである。その方法として金教授が提言したのは、地政学的なアプローチを弱め、地経学的なアプローチを強化することであった。
まず、金教授は北朝鮮核問題を含めた朝鮮半島問題の根源について報告を始めた。近代以後、朝鮮半島は周辺大国の戦略的目標の枠組みに組み込まれ、大国間の戦略衝突及び戦争の場となっていた。日清戦争、日露戦争、朝鮮戦争など、近代以後、朝鮮半島をめぐる三回の戦争は北東アジアの国際秩序に決定的な影響を与えた。金教授によれば、朝鮮半島問題の根源はこうした地政学的な要素から派生するものであり、冷戦が終焉したにもかかわらず、朝鮮半島の冷戦構造が残存したのは、相変わらず朝鮮半島の地政学論理が強く働いているからである。そのため、北朝鮮核問題が発生し、北東アジアの新たな秩序構築をめぐる力争いが朝鮮半島を舞台に繰り広げられているのである。こうした分析の上で、金教授は冷戦後になっても朝鮮半島問題は大国の戦略、北東アジアの国際秩序と密接に関連しているとした上で、朝鮮半島問題の根本的な解決は北東アジアの新たな秩序構築の一環として行われざるをえないと主張した。
次に、金教授は、南北関係と朝鮮半島の統一に対する中国の立場について、報告を行った。金教授が強調したのは、まず南北が経済関係でウィンウィンの関係を築くこと、すなわち先経後政の姿勢であった。南北関係は始めからゼロサムの関係であるため、政治的解決では現在の緊張状態を解きにくいからである。そして、金正恩体制の樹立後、北朝鮮で行っている変化は南北間の先経後政関係の構築可能性を伺わせる。例えば、5.30措置には客観的な経済法則による経済指導と管理の重要性が盛り込まれた。金教授は、北朝鮮のこうした動きは市場経済へ向かって行くための理論樹立の側面を持つと強調した上で、中国の役割は北朝鮮が改革開放へ向かうよう促し、朝鮮半島の平和統一に寄与することであると主張した。そして、海洋経済圏と大陸経済圏が経済統合を通じて和解と融合を成し遂げて朝鮮半島の地政学的な意義を変化させることを提言した。金教授の報告の後には、パネリストによる討論と質疑応答が行われ、議論をさらに深めた。
*センターによる整理