◆プログラム
韓国は中国の台頭に対してどのような認識を持っているのか。また、韓国の対中認識は、日韓関係にどのような影響を与えているのか。韓国・国立外交院外交安保研究所の曺良鉉(ジョ・ヤンヒョン)先生をお迎えして中国の台頭と日韓関係をテーマに定例セミナーを開催した。
まず曺先生は、韓中関係の現状に与えた影響について報告を始めた。政治、安保分野において、韓中両国は朝鮮半島の統一プロセス、米韓同盟の目的、北朝鮮核問題をめぐって異なる立場を取っているにも関わらず、政治∙安保協力を拡大しつつある。例えば、今年6月の韓中首脳会談では、既存の戦略的協力同伴者関係から「成熟した」戦略的協力バートナー関係に格上げされた。経済関係に焦点を当てると、両国は貿易依存度は深めており、これは韓国にとって機会とリスクを同時にもたらしている。社会∙文化分野においては、冷戦時代には敵国同士であり、一般国民もそうした認識を強く抱いていたが、冷戦が終結し、人的交流の増加に従い、韓国に対する中国の認識は友好的となり、韓国は中国を新たな機会の地として捉えることとなった。しかし、歴史と領土問題絡みの紛争要因が残存しており、最近は沈静化の傾向を見せてはいるが、それが国民の相互認識に悪影響を与える可能性は否定できない。
続いて、曺先生は、中国の台頭に対する韓国内での様々な見解を紹介した。悲観論者たちは、中国が国力が増強するに従い、朝鮮半島に覇権的影響力を投影し、北朝鮮体制の維持に重きを置く可能性を懸念している。また、韓中それぞれの経済構造は相互依存から競争の時期に入りつつあると指摘する。一方で、楽観論者は、中国は現在の国際体制の中で台頭してきただけに、力による現状変更を図るとは思われないと指摘し、北朝鮮問題の安定化、経済的利益のためにも中国との協力を深めるべきと主張する。曺先生は、このような分析の上で、現時点では、中国の台頭は韓国社会では脅威よりも機会としてのイメージが強く、政策は関与に重点が置かれているとの見解を示した。そして、韓国は地域の安定勢力としてアメリカの介入を支持しつつも、米中の衝突を防ぐための中堅国外交を展開すると主張した。
韓中関係を分析した後、曺先生が強調したのは、韓国は一方的に中国へ傾斜していることではない点であった。最近の日本社会では韓中提携論がよく議論されている。それに対して、曺先生は、米韓同盟の維持∙強化、中国からの歴史提携提案に対する韓国の慎重な対応を挙げて反論した。そして、日韓は歴史問題を管理し、和解のプロセスを進め、対中認識と立場をめぐってより深く対話し議論を積み上げるべきと提言した。
*センターによる整理