◆プログラム
韓国∙ソウル大学から政治学、社会学、歴史学の専門家をお招きして韓国政治・社会の現状と今後の展望を考えるセミナーを開催した。
康元澤教授の報告テーマは、2014年地方選挙以後の韓国政治の展望であった。まず、朴教授は今回の地方選挙を振り返って、就任後 15ヶ月ぶりの選挙であったため、与党のセヌリ党が有利と予想されたが、セウォル号沈没に対する政府の未熟な対処や朴槿恵大統領の国政運営スタイルがイシュー化することによって、拮抗の様子を見せたと総括した。そして、今回の地方選挙は、事実上与野党の引き分けであり、執権党の支持度下落にもかかわらず野党の限界が歴然となったと指摘した。これは、朴槿恵大統領の支持層は相変わらず期待を寄せていることを示唆している。しかし、朴正熙時代以後の官僚主導、官僚の効率性に対する限界が露呈したことは明らかになったことも事実である。康教授は、こうした分析を踏まえて、朴槿恵大統領は、多元、分権、民間との協力など新しいガバナンス体制を樹立する必要に迫られていると主張した。
二つ目の報告者である張徳鎮教授は、韓国政治におけるSNSの意味合いについて報告を行った。いわゆるソーシャル∙メディア時代の中で、SNSは韓国政治の一部として定着し目まぐるしい変化を主導してきた。韓国国内政治は、朝鮮戦争を経て産業化の時期を経ながら、いわゆる保守独占の状態が続いており、経済成長、反共安保以外の争点は相対的に疎外されてきた。張教授は強調したのは、このような状況の中で、ソーシャルメディアが積極的に活用されることによって、進歩系の政治勢力及び個人が集団行動を起こすことが可能となっている点であった。SNSは、疎外されていた政治勢力及び個人の考えを結集させ、集団行動を起こす機会を与えて韓国政治地平の変化をもたらしているのである。張教授は、このような分析を踏まえて、これからもソーシャル∙メディアは韓国政治の理解にあたって、欠かせない存在であると主張した。
最後に、朴泰均教授は、歴史教科書をめぐる論争について報告した。まず、朴教授は、歴史論争の普遍性を強調した。朴教授によれば、近代国民国家は、歴史を利用して国民国家を形成する課題に直面するため、歴史教育は強い民族主義と国家主義的な傾向を帯びることとなり、この過程で歴史を歪曲、縮小、隠蔽し始める。韓国での論争も世界中で起こった歴史論争とその性格は類似している。例えば、論争の的である教学社教科書にも、国家主義的な傾向の故に、事実関係の誤記、歴史解釈のための恣意的な資料配置、歴史的な事実の両面性に対する理解の欠如が見られる。このような分析を踏まえて、朴教授は、現在と未来の我々に肯定的な影響を与えるような歴史認識を持つよう、熟考する時期であると主張した。