実施報告
【セミナー】

2014.02.27第一八回定例セミナー「金正恩時代の北朝鮮」

日 時2014年2月27日(木)午後5時30分~7時
場 所慶應義塾大学三田キャンパス  北館ホール

 

◆プログラム

報 告: 平井久志(共同通信客員論説委員)
討 論: 小此木政夫(九州大学)
添谷芳秀(慶應義塾大学)
司 会: 西野純也(慶應義塾大学)

 

共同通信の平井久志委員をお招きし、「金正恩時代の北朝鮮」と題するセミナーを開催した。セミナーでは、張成沢粛清に焦点を当て、金正恩政権発足後の北朝鮮内正を検討し、その展望について議論した。

まず、平井委員は、金正恩体制の権力構造について、議論を始めた。平井委員は、政策の面では金正日の遺訓政治を引き継ぎながら、金正恩個人の権力が急速に強化されつつあることを強調した。金正恩政権が誕生した直後、多くの専門家は、その権力構造について、党国家論、勢度政治論、象徴首領制など、いわゆる集団指導及び補佐体制の形を予想していたが、三つのシナリオともに少しずつ外れていることが明らかになっているのである。

上述の分析の後、平井委員は、張成沢粛清の過程を検討した。金正恩政権の発足から、中枢を担うと予想されていたエリートの大半が第一線から退き、人事の交代が頻繁に行われており、張成沢粛清もそれと軌を一つにしている。平井先生は、実際の粛清は2013年12月に行われるが、その以前から動きを察知することができると論じた。例えば、張成沢は、金正恩動静への遂行回数において、2012年度のトップを占めていたが、2013年に入ってから出現場面は半減した。続いて、平井教授は張成沢粛清の意味合いについて、次の三点を挙げた。第一に、張成沢の粛清は権力闘争の側面が強い。最高指導者の権力強化のプロセスの一環であるだけに、今回の粛清による政策路線の変更可能性は低いと思われる。第二に、粛清は、党組織部と党行政部の葛藤の結果である。平井委員は、軍部が張成沢粛清を進めたという議論もあるが、その可能性は低いと述べた。金正恩発足後、党中心の支配システムが定着しつつあることからである。第三に、指導エリートたちが頻繁に交代されることによって、最高指導者が誤った判断を下す恐れがある。中国の周恩来のように、第二位の地位をもって最高指導者にアドバイスし、行政を取りまとめる者が現れていないからである。

 

*センターによる整理

 

イメージ