実施報告
【研究会】

2013.12.10公開研究会「朴正熙時代の政治経済‐1972年8・3措置を中心に」

日  時2013年12月10日(火)午後4時~6時
場  所慶應義塾大学東アジア研究所共同研究室1(大学院校舎8階)
使用言語韓国語

 

◆プログラム

報 告: 朴泰均(韓国∙ソウル大学)
司 会: 西野純也(慶應義塾大学)

 

韓国社会では、1970年代の維新体制に対する二分法的な評価が蔓延している。政治史、社会運動史に基づく否定的な評価もあるものの、経済的な側面から肯定的に評価する見方もある。とりわけ、ニューライト学派の登場は後者の傾向を強めた。要するに、維新体制に対する評価は、善玉悪玉の領域を脱していないのである。このような問題意識基づいて、朴泰均教授は、維新体制に対する価値判断の以前に事実の復元が必要であり、世界史的な文脈で維新を理解する必要性を強調し、その観点から8.3措置の意義を探った。

まず、朴教授が強調したのは、維新体制は、当時、東アジア地域の変化と軌を一つしている点であった。ベトナム戦争の後遺症とニクソン∙ドクトリンに直面し、東アジア諸国は政治の保守化、政権強化の動きを図った。韓国の維新体制も、その一部であったのである。

韓国史の観点から維新体制の特殊性を指摘すると、韓国は反共政策を強化することで、ショックを吸収する一方で、南北の内政不干渉、国連同時加入、北朝鮮の国際機構加入の許容を内容とする6.23宣言を発表したことである。朴教授は、こうした韓国の対応の原因として、朝鮮半島の分断体制を指摘した。

朴教授が強調したのは、政治的側面だけではなく、経済的な側面にも特殊性がある点であった。その代表的な例は、8.3措置である。70年代に入り、韓国国内経済では、大手企業の非合理性が蔓延しており、世界経済は不況に陥りつつあった。8.3措置の主な内容は、社債凍結及び偽造社債の解決による会社の財政健全化、金利の引き下げによる企業の利息返済負担の削減。産業合理化資金による特定産業の育成、企業の道徳性の高揚であったが、その措置は、経済的合理性を保っている企業が、経営不振企業を合併する機会となり、韓国の産業合理化資金が重工業産業に優先的に配分され、大手企業の産業拡大の契機となった。その代表的な例としては、現代造船所が挙げられる。要するに、8.3措置は、財閥中心の経済構造が形成を加速化させたのである。8.3措置は特定企業の肥大化という韓国経済の特殊性をもたらす一因であったのである。

興味深いなのは、8.3措置の場合と同じ方法が以後にも、繰り返された点である。例えば、80年代の租税減免法である。重工業産業における過剰な投資問題を抱えており、アメリカからも構造調整の圧力に迫られていた韓国政府は、経営不振に陥り、産業銀行の管理下に置かれた企業を合併する場合に、租税を免除する制度を採った。朴教授は、その措置について、8.3措置のように、特定企業の巨大化傾向を加速させ、経済危機がむしろ財閥企業が飛躍する契機となったと論じた。

 

*センターによる整理

 

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