◆プログラム
関西学院大学の平岩俊司教授を招き、「北朝鮮をどう見るか」と題とするセミナーを開催した。平岩教授は、『北朝鮮――変貌を続ける独裁国家』(中公新書、2013年)、『北朝鮮は何を考えているのか――金体制の論理を読み解く』(NHK出版、2013年)の著者でもあり、セミナーはブック・トークの形式で行われた。
まず、平岩教授が強調したのは、北朝鮮問題の起源を探るにあたって、焦点を当てるべき時代が異なる点であった。これは、特定の事件を理解するために、過去のどの時点まで遡るのかという問題意識と繋がる。平岩教授は、これについて、二つの視角を提示した。第一に、現在の北朝鮮問題は、1980年代から90年代にかけて朝鮮半島の冷戦構造の解体過程にその起源がある。平岩教授は、朝鮮半島の冷戦構造の解体過程がうまく進まなかったため、北朝鮮は核兵器の開発に乗り切り、朝鮮半島では軍事的緊張が続いているのである。第二に、北朝鮮という国家そのものを理解する場合には、1945年の解放以後からの連続性を捉えなければならない。そのような作業の上、北朝鮮が、国際政治の変化に合わせていかなる変貌を遂げるのか注意を払 う必要がある。二つの本は、上述した問題意識を踏まえて、執筆したものである。
ブック⋅トークを行いながら、平岩教授は、北朝鮮研究のアプローチとその課題について議論を進めた。一般に、北朝鮮研究は、地域研究の視点から地域で起こっていることをしみじみに整理し、描きだす方法が主流であった。しかし、北朝鮮を国際政治の一部として理解する必要性がますます高まっている。北朝鮮が冷戦構造の解体に従って、アメリカとの関係改善の試みたことからも分かるように、国際情勢の変化は、北朝鮮の対外政策、国内政策に変化をもたらした。何よりも、北朝鮮は分断国家であり、政治、経済、社会のあらゆる部分において、韓国との体制競争を強いられる状況であるからである。
研究アプローチにおける変化の必要性は、北朝鮮の情報と資料とも関連している。金一成時代には、閉鎖的な冷戦構造に置かれており、公開情報は少なく内部事情が非常に不確実であった。しかし、北朝鮮に対する対外の関心が高まるにつれ、取材、入国によって情報を直接入手するケースが増えている。また、ロシア、中国だけではなく、南北関係の変化によって、韓国からも資料と情報を手に入れることができるようになった。しかし、不正確な情報も蔓延しているだけに、それを読みとるにあたって、注意を払う必要がある。平岩教授は、このような問題意識に基づき、これからは情報を精査するための基準を建て、洗練された分析視角で北朝鮮を論じるべきと主張した。
*センターによる整理