実施報告

2014.10.03【日韓知性の開かれた対話】第一次会合(ソウル、10.3-5)

日  時2014年10月3日(金)~5日(日)
場  所シェラトンウォーカーヒルホテル(韓国∙ソウル)
共同主催慶應義塾大学東アジア研究所現代韓国研究センター(日本)・ソウル大学日本研究所(韓国)

 

◆プログラム

October 3 (Fri.)

19:00-20:3 Welcome Dinner

 

October 4 (Sat.)

09:00-09:30  Opening Ceremony
Opening Remark Prof. Park, Cheol Hee
Welcoming Address Prof. Ahn, Se Young
Introducing Participants Park & Soeya
09:30-11:30 Session One “Whereabouts of Korea-Japan Relations?” (日韓関係はどこへ向かっているのか:現状診断と未来展望)
(10:30-10:45)
(Coffee Break)
Moderator Amb. Shin, Kak-Soo
Presenters Prof. Nam, Ki Jeong
Prof. Soeya, Yoshihide
Discussants Prof. Cho, Hwa Soon
Prof. Okonogi, Masao
11:45-13:15 Luncheon @ Vista Hall, Walker Hill Hotel
13:30-15:30 Session Two “What To Do With Korea-Japan Relations” (日韓関係をどうするか:改善策と対案模索)
(14:30-14:45) (Coffee Break)
Moderator Prof. Park, Cheol Hee  
Presenters Dr. Choi, Kang
Mr. Wakamiya, Yoshibumi
Discussants Prof. Kim, Heung Kyu
Prof. Togo, Kazuhiko
16:00-18:00 Session Three “How To Grow Up Next Generations for Brighter Korea and Japan Relations” (明るい日韓関係のため未来世代をどう育成するか:政策提言と行動計画)
Moderator Prof. Baek, Sun Geun
Presenters Dr. Yoon, Jong Hyeok
Prof. Nishino, Junya
Discussants Prof. Chung, Jae Jeong
Prof. Ogura, Kizo
19:00-21:00 Dinner hosted by Prof. Ahn Se Young @ Myoungwolkwan

 

October 5 (Sun.)

Departure

 

 

 

◆主催者共同発表

 

「日韓知性の開かれた対話」

主催者共同発表

 

「日韓、未来世代のために協力を」

 

慶應義塾大学東アジア研究所現代韓国研究センターとソウル大学日本研究所の共催による「日韓知性の開かれた対話」が、2014年10月4日、ソウルのウォーカーヒルホテルで開催された。対話には、両国合わせて28人の知識人が参加した。日韓両国間で感情的な議論が続く中で、知的な対話を立て直し、二国間関係にとらわれ国際的な視野を失いがちな現状を懸念する知識人の集まりであった。

両国の参加者は、現在の日韓関係が、政治レベルでの対話の断絶により経済や国民意識に悪影響が及ぶ「複合危機」に陥っている状況について、深刻な憂慮を表明した。この50年間の歴史的和解の試みにも関わらず、感情的に相手国を批判する社会勢力が存在しており、両国のメディア報道も均衡感覚を失う場合がある。その結果、日韓の葛藤が国際舞台にまで拡大し、協力可能な事案が実行できず、パートナシップの意識が弱まって行く状況が生まれている。葛藤の拡大を避けるために、両国政府は日韓協力を妨げている懸案を早急に解決すべきである。

「日韓知性の開かれた対話」(以下、「知性の対話」)は、複合危機の長期化を克服し日韓関係の新しい地平を開くために、両国に視野の転換が必要であることを強調し、次の二つの視角を提示した。第一に、過去にとらわれすぎず、未来の世代に明るい日韓関係を準備するための努力が必要である。第二に、二国間関係に閉じこもることなく、東アジアと国際社会での協力を増進すべきである。

こうした日韓協力の拡大のためには、相手国を刺激する言動を自制し、信頼を築くための対話を拡大し、相互理解を増進するための継続的努力が必要である。その出発点は、相互不信と誤解の回避である。「知性の対話」で、日本側は、韓国で議論されている日本の軍国主義への回帰は今後もありえないことを指摘した。戦後日本は平和主義国家としての道を歩んできており、最近の変化も韓国が懸念するような軍国主義化ではないことが主張された。また韓国側は、日本が憂慮する韓国の対中傾斜は現実とは異なることを指摘した。中国に一方的に傾斜している訳ではなく、日本への配慮もあることが主張された。こうした現在の相互不信と誤解は、相手国に対する理解不足に起因しており、これを是正する必要がある。相互誤解を解くための対話を増やし、両国に自らを省みる努力も必要であることが強調された。

「知性の対話」では、日韓関係構築ための多面的かつ多層的な協力のアジェンダが提案された。まず、日韓両国が共に直面する少子高齢化などの社会的課題に対する共同研究と対応が必要である。日韓協力の前提には、両国社会の均質化があるのである。また、第三国での経済協力、開発途上国へのODA協力など、国際社会における共同行動の余地が大きいことが指摘された。また日韓両国は、環境、エネルギー、気候変化、健康衛生、防災及び災難対策など、国境を越えた諸課題に対して共同でイニシアティブを発揮すべきである。

何よりも、「知性の対話」では、未来世代のための日韓関係の再構築が中心テーマとして提起された。現在の不安定な日韓関係を未来世代に引き継ぐべきではなく、今の若い世代に希望を持たせるような関係を築かなければならない点が強調され、以下のような具体的な行動計画が提示された。

 

(1)日韓関係の肯定的事例を調査し、そうした事例集や書籍を刊行し、学習現場で副教材などとして活用する必要がある。日韓交流と協力の側面を未来世代に教えなければならない。

 

(2)韓国は戦後日本に対する理解を、日本は植民地支配に対する理解をより深める必要がある。また、両国の未来世代に戦後の日韓関係史、とりわけ交流と協力の歴史を教えなければならない。

 

(3)両国は、青少年交流を画期的に拡大し、制度化しなければならない。特に、大学生はもちろん、小中高学生に対しても幼い頃から相互尊重と相互理解の礎を作ることが重要である。相手国への修学旅行やホームステイは、その出発点になる。

 

(4)両国国民が関心を持つメガイベントや大規模な文化行事の開催は、交流を拡大させる契機となる。このような観点から、2018年の平昌オリンピックと2020年の東京オリンピックに向けた協力体制の構築が望まれる。

 

 

(5)長期的には、日韓両国の共同研究と人材の共同育成システムを開発して行く努力が必要である。たとえば、キャンパスアジアの拡大、JAICAとKOICAの協力、国際的研究開発における協力、共同研究拠点の構築などが挙げられる。

 

2014年10月5日

 

慶應義塾大学東アジア研究所現代韓国研究センター

ソウル大学日本研究所

 

 

 

 

ソウル大学日本研究所との共催で「日韓知性の開かれた対話」2014ソウル会合を開催した。現政権下の日韓関係は国交正常化以来最悪ともいえる状態であり、2015年日韓国交正常化50年を迎えるにあたり、政府間において、長期的なビジョンの形成はほとんど期待できない状況となっている。こうした中で、閉鎖的で感情的議論に陥った日韓間の対話を立て直し、中長期的論理と当面の現実的な案を公論化する目的下で日韓のオピニオンリーダ約30名が集まった。会合で、両国の参加者は、現在の日韓関係が、政治レベルでの対話の断絶により経済や国民意識に悪影響が及ぶ「複合危機」に陥っている状況について、深刻な憂慮を表明した。そして、日本と韓国は戦略的利益を共有していることを強調しつつ、両国の建設的な対話を復元し次世代に明るい日韓関係を継承させるための方案について活発な議論が行われた。