◆プログラム
慶應義塾大学法学部政治学科と韓国延世大学校政治外交学 科は1992年より毎年両校を相互訪問して学術交流を行って おり、その一環として本センターと共催で公開シンポジウム を開催した。
第1セッション「日本の課題と視点」では、烏谷准教授が、 福島原発事故を受けた日本の原子力政策について分析した。烏谷准教授は、原発再稼働問題では、社会的信頼が崩れた原 発を再開するという行為をどのように政治的に正当化できる のか、誰がどのような基準を根拠として原発再稼働を決定す るのか、また、その決定が人々からどの程度正当な決定とし て支持を得ることができるのかが問われていると説明した。 小嶋准教授は、中国共産党第19回党大会を終えた習近平政 権について、軍、党、経済、社会運動等の様々な観点から分 析を行った。小嶋准教授は、習政権が直面する新たなリスク として、網紀粛正・汚職摘発による党内の不満、集団指導体 制と習近平個人への権力集中の矛盾などを指摘した。
第2セッション「韓国の課題と視点」では、白宇烈教授が、 中国と関係の深い権威主義国家であるミャンマーと北朝鮮を 事例とした政治体制比較を行った。制限的とはいえ民主化が 進み改革開放を採用したミャンマーと、現在も独裁が堅固で あり改革開放が進まない北朝鮮の違いについて、体制安定性 や選挙の有無、中国に代わるパトロン国家の有無等を要因と して挙げながら説明した。張東震教授は、南北関係を人権や 国際支援、正義の戦争といった観点から捉えて報告した。張 教授は、人権尊重の概念を共有せず、解釈も異なっている現 状が南北関係をますます不安定させているとして、北朝鮮の 政権が住民の人権を無視することは、政治的正当性を弱体化 させ、自己防衛のロジックを否定し、国際社会が北朝鮮に介 入する根拠になると指摘した。
*センターによる整理