2009.09.07センター長挨拶・小此木政夫(2009年2月5日)

現代韓国研究センター長

小此木政夫

 

本日(2009年2月5日)は、現代韓国研究センターの開所記念シンポジウムのために、各大学や研究所のみならず、外務省、在京大使館、国際交流機関、メディア、企業から、そして学生諸君など、多数の皆様にご参集いただきました。まことに有難うございます。

とりわけ、当センターの開所や研究プロジェクトに多大な支援をいただく韓国国際交流財団の任晟準理事長、このシンポジウムの共同の後援者である国際交流基金の小倉和夫理事長、崔相龍高麗大学名誉教授・元駐日韓国大使そして日本国際交流センターの山本正理事長に御臨席いただきましたことは、我々が最も光栄とするところであり、心から御礼を申し上げます。

慶應義塾大学はいまから150年前に、福澤諭吉先生が創立された日本で最初の近代的総合学塾でございます。福澤が当時の朝鮮に深い関心をもち、開化派の知識人と深い交流を持ったことはよく知られていますが、そのような歴史に支えられて、慶應義塾大学は今日も日本における東アジア研究の拠点の一つになっております。韓国・朝鮮研究も例外ではありません。

慶應義塾大学の韓国・朝鮮研究は実に多彩であります。例えば言語学の渡邊吉鎔、近代日朝関係史の田代和生、文化人類学の野村伸一、経営史の柳町功、法律学の太田達也、そして政治学では私の他に韓国政治研究の西野純也と北朝鮮政治研究の礒崎敦仁の二人の若手研究者が熱心に研究に従事しております。本日総合司会を担当している添谷芳秀も日本外交の専門ながら、朝鮮半島との外交関係に深い関心を抱いております。また、経済学は地域を超える広がりを持つ学問分野ですが、それでも、木村福成や本日セッション3で登場する竹森俊平などが、やはり韓国に深い関心をもって、韓国の研究者と積極的に交流しております。その他、慶應義塾大学で研鑽を積み、他の機関に所属する研究者や実務家は枚挙の暇もございません。

率直に申し上げて、新しく誕生する現代韓国研究センターは慶應義塾大学に韓国・朝鮮研究の一つの拠点を形成することを目指しております。現代韓国・朝鮮の政治・外交、経済・経営、社会などに関する研究プロジェクトを運営したり、その時々のトピックを取り上げるセミナーや講演会を企画したりしたいと考えております。

しかし、福澤先生が我々に教えたのは、「社会の先導者」たることであって、独善に陥ることではありません。慶應義塾創立150年のスローガンも「独立と協生」であります。その意味で、第一に、我々は新しく発足する研究センターができる限り社会的に「開放された拠点」であることを願っております。センターの開所に先立って、本日、このように公開シンポジウムを開催するのも、そのような考えに基づいております。

また、第二に、我々は研究センターを日韓学術交流の拠点にして、日韓間に知的コミュニティーを形成するために努力したいと考えております。我々にとって最も重要なのは日韓の知的対話であり、共通の未来を形成するための絆であると信じるからであります。150年前に福澤が理想としたのも、そのようなことであったと確信しております。

新しい研究センターの開所ということで、私の挨拶もやや格調が高くなったかもしれません。しかし、研究センター開所に当たってあえて申し上げるならば、私はこの研究センターをぜひ「志の高い」研究拠点にしたいと考えております。

これは数年にして達成できる目標ではありませんし、我々だけの努力で達成できる目標でもありません。ぜひここにご参集の皆様のご支援とご協力をいただきたく存じます。

本日は、慶應義塾大学東アジア研究所現代韓国研究センターの開所記念シンポジウムに参加いただき、まことにありがとうございます。

※2009年2月5日の開所記念シンポジウムでの挨拶