2014.10.11定例セミナー「激動の東アジア-地政学の復活」(2014/10/9)

日 時:2014109日(木)午後1時~230 

報 告:(韓国∙国立外交院院長)
討 論∙司会:添谷芳秀(慶應義塾大学法学部教授)

場 所:西校舎3階 532番教室

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韓国・国立外交院の敏(ユン∙ドクミン)院長をお迎えして定例セミナーを開催した。

東アジアの現状を理解するにあたって、尹院長はキーワードとして以下の三つを提示し分析を 行った。第一に、北朝鮮問題である。金正恩はスイス留学経験の持ち主であることは周知の通りである。政権発足の初期には平壌に遊園地を建設し、ファーストレディーを動向して現地視察へ行くなど斬新な姿を見せることを受けて、諸外国は北朝鮮の変化の可能性に期待を寄せていた。しかし、北朝鮮の変化は未だに見えてこない。金正恩時代の核心としての役割を期待されていた張成沢が処刑され、その後も軍部と党の重要人物が次々と粛清され、人事交代が行われていることからも分かるよう、相変わらず恐怖政治が北朝鮮政治を色づけており、軍事的挑発を繰り返している。ところが、最近、北朝鮮は外交の面において、変化を模索している点は注目に値する。尹院長は、金正恩政権の実力者三人を韓国へ派遣したことと拉致問題をめぐって日本との対話に取り組んでいることは、北朝鮮が外交的孤立からの脱却を目指していることを示唆すると論じた。

第二に、東アジア地域の主導権をめぐって米中の競争である。尹院長は、中国の対外政策について、経済力と軍事力の増強に従い、利益の概念を広げて自己主張を強めている様子を見せていると分析した。中国が戦前日本のような膨張主義に走るか否かははっきりとしていないが、東アジアで二十世紀のような地政学の論理が復活していることを示唆している。中国の台頭はアメリカとの競争を引き起こしている。尹院長は、韓国に対する中国の魅力攻勢、米韓同盟に対するアメリカの高い評価は、東アジアの主導権をめぐる米中間の競争の脈略で理解できると論じた。

 ところが、昨今の東アジアでは、二十世紀のような地政学の論理がそのまま繰り返されているわけではない。尹院長は、三つ目のキーワードとしてクローバリゼーションを取り挙げた。国家間の経済的な相互依存が強まり同じ価値観と生活方式が普及されることによって、国際政治のパラダイムの変化が到来しているのである。尹院長は、上述の分析の上で、民主主意を共有しアメリカと同盟を結んでいる日本と韓国が、地域協力に積極的に取り組み、新たな成長動力を確保するために協力することを提言した。

 

*センターによる整理