2014.12.02研究会「2014年統一地方選挙における釜山・大邱有権者の投票行動変化と地域政党の悩み」、「北朝鮮人権状況と人道的支援の政策的効率性評価」(2014/12/1)

日 時:2014121日(月)16:0018:00

 報告①:高 選圭(選挙研修院)

 「2014年統一地方選挙における釜山・大邱有権者の投票行動変化と地域政党  の悩み」

報告②:李 成宇(済州平和研究院)

 「北朝鮮人権状況と人道的支援の政策的効率性評価」

司 会:西野純也(慶應義塾大学)

場 所:大学院校舎8階 東アジア研究所共同研究室1

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韓国から2人の専門家を招き、研究会を開催した。まず、選挙研修院の高選圭教授が、2014年度の6.4地方選挙で現れた地域政治のメカニズムについて、釜山と大邱のケースをもって分析を行った。大邱と釜山は、両方とも与党のセヌリ党の強力な支持地域であるにも関わらず、今回の市長選挙において、無所属の候補が大躍進を遂げて注目を集めた。高教授は、無所属の候補躍進の主な理由として保守進歩の陣営論理に拘らない斬新な姿勢を指摘した。以前から韓国の地方選挙は大統領の国政運営に対する中間評価として位置付けられ、今回の選挙でもセウォル号沈没事件に対する政府の対応、朴槿恵大統領の国政運営に対する評価が主な争点として取り上げられた。高教授によれば、大邱と釜山の有権者はこうした既存の陣営論理よりも地域に対する代案的なリーダシップを模索し、票を投じたのである。ところが、市長選挙を根拠に地域主義が揺さぶったと評価することには慎重にならざるをえない。市長選挙では、無所属の候補が大躍進を遂げたものの、例えば、区庁長選挙などでは、セヌリ党の当選が増え投票率も前回に比べて遥かに上昇したからである。有権者が代案的なリーダシップを求めながらも、伝統的に支持してきたセヌリ党への期待感を完全に放棄したわけではなく、地域主義の根強さを物語っている。

 続いて、済州平和研究院の李成宇教授が、北朝鮮の人権問題について報告を行った。韓国内で北朝鮮の人権問題及び人道的支援はイデオロギーの文脈で議論されがちであるが、報告の趣旨は北朝鮮の人権問題を経済的の文脈で分析することであった。こうした問題意識を踏まえて、李教授は北朝鮮の経済状況が改善されれば、人権状況の改善へ繋がる傾向を見せると指摘した。李教授によれば、北朝鮮の人権状況を論じるにあたって、個人の自由及び政治的権利も重要であるが、経済的生存権への脅威として経済的貧困は重要な要因であるということである。特に、李教授が強調したのは、中朝間の経済関係であった。対中貿易依存度が高まれば、北朝鮮の経済が改善され、人権状況の改善へ繋がるのである。中朝経済関係が北朝鮮の人権状況に与える効果は、他国からの人道的支援よりも遥かに強いと、李教授は付けくわえた。

 

*センターによる整理