2016.01.19研究会「ヴェトナム戦争と韓国、そして歴史論争」(2016/1/15)

日 時:2016115日(金)午後430分~600

場 所:慶應義塾大学三田キャンパス 大学院校舎8

 東アジア研究所・共同研究室1

報 告:朴 泰均(ソウル大学)

司 会:西野純也(慶應義塾大学)

 使用言語:韓国語のみ

 

ソウル大学の朴泰均教授を招いて「ヴェトナム戦争と韓国、そして歴史論争」と題する研究会を開催した。

朴教授は、サイゴン陥落から40周年を迎えてヴェトナム戦争研究が盛んになっているとし、韓国社会にとってヴェトナム戦争の意味合いについて論じた。朴教授が強調したのは、ヴェトナム戦争に対する韓国社会の認識と世界のそれとの相違が大きい点であった。その相違は韓国社会における記憶の政治から起因している。特定事件に対して何か記憶され、何か忘却されるのか。記憶はいかに現実政治に影響を及ぼすのか。朴教授によれば、記憶の政治は韓国社会における歴史論争を理解する鍵となるという。

続いて朴教授は、ヴェトナム戦争に対する韓国社会の記憶について議論を進めた。サイゴン陥落から40年が経ったにも関わらず、反共を訴える朴正熙大統領の緊急談話は記憶に新しい。2003年にアブガニスタンに韓国軍を派兵する際にも、他国の戦争で経済的利益を確保する必要性が議論されたことからも分かるように、ヴェトナム戦争特需の記憶が働いた。しかし、南ヴェトナムが国民からの支持を得られなかったため、敗北してしまったこと考察されていなかった。朴教授は、こうした議論の上で、今まで忘却されていたヴェトナム戦争の教訓を掘り起こすべきであると主張した。朴教授の報告では米中冷戦、朝鮮半島の安保危機状況も考察されるなど、ヴェトナム戦争の世界史的意味についても論じられた。研究会では研究者、ジャーナリスト、学生など多くの観客が参加し、活発な討論が行われた。

 

*センターによる整理