2017.08.30研究会「金正恩体制と対北朝鮮経済制裁」(2016/9/13)

日 時:2016年9月13日(火) 16:00~18:00

場 所:慶應義塾大学 三田キャンパス 東アジア研究所 共同研究室1(大学院校舎8階)
報 告:李基東(国家安保戦略研究院)、辛容度(国防大学校)
司 会:西野純也(慶應義塾大学)

[使用言語:韓国語のみ]

 

韓国国家安保戦略研究院の李基東研究員と韓国国防大学校の辛容度教授をお招きし、金正恩体制と対北朝鮮経済制裁について研究会を開催した。

李基東研究員は「金正恩リーダーシップの特徴」というテーマで報告し、主に金正日政権時との比較によって金正恩政権の説明を進めた。前政権との大きな相違点としては、事実上党の存在が脆弱であった金正日政権とは違って金正恩政権では党の機能が正常化され、軍領導体系を維持しながらも党の機能を通じて国家と軍隊を領導できるシステムが構築されたことであると述べた。また、政策決定過程の変化に注目すると、金正日政権では非公式的なルートを通じて政策決定が行われていたが、金正恩政権では党の公式機構の会議を通じて重要政策が発表されるようになったと指摘し、このような変化の狙いはPositional leadershipであるとも主張した。また、実権力者と職位との関係性がなかった前政権とは異なり、金正恩政権では職位ごとにそれ相応の権力を与えることとなったとも述べた。また、恐怖政治とも呼ばれる金正恩政権の政治体系の背景には金正恩の比較的少ない革命業績の数や若いなりには早く継承できたという内面的な不安があるとも主張した。

辛容度教授は「対北朝鮮制裁の効果と展望」というテーマで報告し、主に経済制裁が北朝鮮に対してどのような影響を与えたのかについて説明した。特に国連安保理決議案第2270号を中心に報告が行われた。今回の報告で中心的に扱われた決議案第2270号は従来までの決議案に比べて強力でありながらも実質的な制裁措置などが初めて導入されたという点が北朝鮮を内外的に変化させる一要因になるのではないかと期待されると述べた。北朝鮮の閉鎖経済という特徴から経済制裁がどれぐらいの影響力を持つのかについては疑わしいと述べていたが、コブ・ダグラス型の生産関数モデルを使って予測した結果、閉鎖経済であるのにもかかわらず、予想外にも北朝鮮のGDPの減少に影響を及ぼしていることが分かった。しかし、従来までの制裁とは違い、北朝鮮により強力的な措置を講じることができるのは間違いないが、生計目的となるものについては例外扱いとされているところに関しては対イラン制裁とは根本的な相違点であると指摘した。また、このような北朝鮮の生計目的としての石炭や鉄鉱石などの輸出を主に中国に依存している点についても中国政府がどのように積極的に経済制裁を行うかが決議案第2270号の実効性の判断軸となるだろうと主張した。また、第2270号が施行されてからも北朝鮮の挑発が相次ぐ現状を考えるとより強力的な国際社会からの対北朝鮮制裁措置が必要となるのではないかとも指摘した。

 

 

*センターによる整理